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#CAR 想いでの車〜スバル360

Subaru_360_2スバル360にちゃんと乗ったのは、長じて、かなりフケてから。

思い出のクルマ、と書ける子供のころは、はたして長時間乗る(乗せられた)機会があったようななかったような。

どっちにしても我が家で所有したことも、父の運転する隣に乗った記憶もない。

ただし、昭和33年から10年間も製造された上、大きなモデルチェンジもなかったので、本当に街で出会う機会の多かったクルマだ。

今でも、現役、ディスプレー用、保管車などなど、360軽のなかでは遭遇率ナンバーワンだと思う。

子供心に覚えているスバル360は、初期型のデメキンの姿はほとんどなく、中期以降のレンゲの底にヘッドライトが付いているようなデザインになってからだ。

ただし、スバラシクきれいに手入れされたクルマは少なかった。

それだけ、日常的なアシとして使われていた証拠だ。

誰もがピカピカに磨いて、スバル360を大事にするようになったのは生産中止以降じゃないかと思いたくなるほど、昭和40年当時のスバル360には日々の生活を共にすごしているニオイがあった。

多少洗車をサボっているのはアタリマエ、リヤウインドのアクリルが曇ってチリメン状のヒビが入っているとか、テールレンズが白濁しはじめているとか、FRPのトップの色が変わり始めているとか、どこかブツけているとか(とくにリヤが多かった気がする)、とにかくさまざま。

FRPのトップをキャンバスに代えた「コンバーチブル」や、リヤサイドウインドがバタフライ式に下ヒンジで開くことができる「コマーシャル」、バンタイプでどこかVWタイプ2に通じるものがある「カスタム」は、子供心に面白いなぁと感じたものだ。

さて、スバル360の思い出で、強く残っているものは、小学校中学年か高学年のころの友人との思い出だ。

その友人の父が、当時スバルの販売代理店だった伊藤忠商事に勤めていた。

伊藤忠からスバルを買うと、ボディに立派なヨーロッパ家紋調のステッカーが威風を放って張られた時代だ。

友人の家に遊びに行ったところ、夕方彼の父が帰宅して、友人とボクを交えてスバル360のことをいろいろと話してくれた。

そのとき、セールス用だったろうか、一冊の図版が数多く載った小冊子を開いてスバル360の輸出仕様(450・マイア)のことや開発の歴史などを説いてくれた。

開発のときに参考にしたクルマには、代表して3台があったことが非常に印象的だった。

というのも、その頃の国産車は、たとえば日産はオースティン、いすゞはヒルマンという基礎となった技術があるか、あるいは先進的なアメ車やヨーロッパ車を参考にしたりコピーしたり、というのが主流だったからだ。

すると、スバルはカタチといいメカニズムといい、VWビートルかフィアット500ということになる。

しかし、小冊子には、両車ともスバル360と同様に空冷リヤエンジンによる合理的ななりたちの仲間、といった程度の扱いで、グローバルなセールスプロモーションの一役を買っているにすぎないのだ。

……子供のころの記憶だから、あまりアテにはならない……。

対して、参考にしたクルマは、シトロエン2CVとイセッタ、さらに名前を聞いたことも見たこともないクルマだった。

え? 何で?

2CVは大きさもずっと大きいし4ドアだ。

イセッタは、自動車というより軽というより屋根つきスクーターだ。

もう1台は、スバル360とは似ても似つかないごくフツーのカタチをした乗用車だ。

その3つを足して3で割るとスバル360になるのか?

……子供心にはどうにもこうにも解けない謎だった。

謎が謎のまま、帰宅しなければいけない時間になってしまっていた。

ボクは、友人の父が運転するR2(だったと思うのだが)に乗って家に戻った。


それからずっと、ボクにとってスバル360は、不思議な出生のクルマ、として心に刻まれてしまった。

しかも、最後のフツーの乗用車の名前がどうしても思い出せないことが、謎に拍車をかけた。


後年、大人になってから最後のクルマが西ドイツのロイト400だったことを知る。

そのころには、シトロエン2CVの徹底した合理性とすばらしい乗り心地、イセッタの卓越したマイクロカーとしての資質も知る。

ロイトは、360軽の規格よりも大きいボディだが、当時のマイクロカーとしては乗用に耐えられる資質と耐久性、信頼性、さらに発展性を持っていたことも学んだ。

スバル360は、独創性のカタマリのような成り立ちであり、かつ大成功を収めたクルマだ。

大人になってから関連書籍や実車、関係者の話を聞くにつれ、独自のアイデアやその秘話も知った。

その結果、挙げた3台のいいとこドリだけでスバル360が完成したワケではないことを知る。

たとえば、2CVは乗り心地は理想のひとつとしたが、ボディ構造もサスペンション形式(トレーリングアーム採用は同じだが)もほとんどスバル360への流用はない。そう、回顧した書籍には紹介されている。

クルマに限らず、設計・開発をスタートするときのアイデアの提供素材には、目先でカタチやコンセプトが似通っていることだけでなく、もっと広い視野で理想やターゲットを持つ必要がある。

パクっただけではダメなのだ。

もちろん、今ある現実からかけ離れるほどの理想も持ち合わせている必要も往々にしてある。

そんなアレコレを、時間をかけて教えてくれた1台。

ボクにとってのスバル360は、ソコが大きい。


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