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#CAR 想いでの車〜キャロル

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このクルマは、我が家では「ヒュルヒュル」と呼ばれていた。おどろおどろしい意味の「ひゅるひゅる」ではなく、軽い感じの擬音、ヒュルヒュルである。つまり、このクルマはいつもヒュルヒュルという音とともに現れ、ヒュルヒュルという音とともに走り去っていったのだ。

クルマのオーナーは、隣家の主たっちゃんだった。だから、「このクルマ」ではなく「そのクルマ」が正しいのかもしれない。知れない、というのは、個体差なのかキャロル特有の音だったのかが判然としないからだ。

この文を書く前にwikipediaでキャロルについて調べてみた。「エンジン駆動の強制冷却ファンによって側面から冷却気を導入する。このファンの音も初代キャロルの特徴のひとつとなっている。 」の一文がある。ヒュルヒュル音の正体がそれなのか、それともこの個体だけファンベルトか何かがユルくて音を発していたのか。

それはともあれ、ヒュルヒュルという軽い音とキャロルのちょっと華奢なイメージのボディとが妙にマッチしていた。

今のトールボーイ全盛の軽とは異なって、当時の軽セダンはどれも総じて背丈が低かった。キャロルもそうだ。軽のサイズでクルマらしく見えるプロポーション的バランスや重量のことなど考えると当然の帰結なのだろう。

そんな中、キャロルは軽では珍しい4ドアボディだった。2ドアもあったらしいが、路上ではほとんど見かけた記憶がない。4枚ともちゃんと巻き上げウインドで三角窓も備えている。だから、ドア1枚単位で考えると、立派なスペックなのだが実際に見るとけっこうミニチュアの世界にある。子供心にも、「ちいちゃい」と感じた。

そのころ我が家で乗っていたコロナのドアに比べれば、お屋敷の塀の勝手口、玄関ではなく庭へ入る門。そんな雰囲気だった。特にリヤドアは、薄い上にクリフカットとエンジンルームのサイドルーバーとの視覚効果で、何となく、バラの植え込みのある庭へ入る白く塗装された鉄格子の小さな門扉を彷彿させた。

ボディが、白にピンクのツートンだったことが大きいかもしれない。たっちゃんのキャロルは、フロントをぐるっと囲むトリミングモールが追加された後期型だったと思う。

たっちゃんのキャロルは、デイリーユースの高速ランナーだった。というのもたっちゃんは道路公団の職員で、毎日名神高速の豊中インターから茨城インターまでキャロルで通勤していたのである。その副産物としてキャロルの車内には大量の未清算通行券があった。というより散乱していた。

その理由はこうだ。往路ではインターの料金所で通行券を受け取るものの茨城インターでは料金所手前の事務室へ入るので清算することがない。帰路に関しては職員用通行証のようなものがあって通行券なしで料金所を出る。確かそんなシステムだったと思う。当時の通行券は、パンチカード式で普通の封筒くらいのサイズだった。

もうひとつ、ヒュルヒュルの思い出は、たっちゃんは中古で購入したときに、車検のタイミングだったのか名義変更の手続きの事情だったか、これも正確に覚えていないのだが、しばらく仮ナンバーで走っていたことだ。業者が回送用に使える「臨時ナンバー」というやつだった。そういうモノがあるというのをヒュルヒュルを通じて知った。

今考えると、360ccのキャロルがほとんど毎日臨時ナンバーで高速をフリーパスで走っていた、というのは何ともスゴイといえる話だ。

白いボディにピンクのルーフのキャロルが、出来て間もない名神高速を疾走する姿は、微笑ましいものだったのか、ちょっと悲惨さも含めた中にガンバリのある凛々しいものだったのか、それとも・・・目の当たりにしていないので何とも言えないが、クリフカットでちょっと尻下がりのリヤビューは絶対にカワイかったに違いない。

ヒュルヒュルに乗せてもらったのは、覚えている限りでは数回、ほんの近所までだったと思う。前述したように、毎日通勤で使用しているし、当時、夜にクルマで買い物とかお出かけなどといっても開いてる店などない郊外ではどこへも行きようがなかったからだ。

それゆえ、キャロルに関してのインプレッションはほとんどない。覚えているのは、子供でもかなりキツイ後席。バラ園の門たるリヤドアはアリバイ工作のための存在である。大型のアメ車のスタイリングテイストをぐぐっと縮小したボディデザイン、オシャレなツートンカラー、いっぱいあるモール類やサッシュなどなど・・・なんだか乗り込むとオママゴトの世界に踏み込んでしまったようなクルマ、それがキャロルの総合的な感想だ。だから、「バラ園」なのである。

当時から、つるバラのアーチのあるガレージに置いていおくのにもっとも似合う軽だと位置づけていた。

たっちゃんは、新婚夫婦感に赤ちゃんが生まれたこともあって、軽なれど4ドアのキャロルを選択したのだと言っていた。ほどなくして、奥さんとちっちゃな赤ちゃんが病院から帰宅した。リヤシートに収まるちょっと大空真弓に似た奥さんと抱かれた赤ちゃんと、ピンクのルーフのキャロルは、とても微笑ましいコントラストを見せていた。

その前後に、ナンバーは本ナンバーに替わり、同時に工場で整備してもらったということで、ヒュルヒュル音も消えていた。次は、高速でふらつきやすいからタイヤか足回りかなぁ、とたっちゃんは計画していたようだが、その計画が実行される前に、またヒュルヒュルという音が前より小さいもののしだした、と照れ笑いしながらこぼしていた。


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