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#CAR 想いでの車〜ブルーバード(2)

4101

二代目ブルーバード、型式でいうと410ブルーバードから最初に思い出すキーワードは「尻下がり」そして次が「ひさしのようなリヤウインドウ」で、この2つはボクが子供のときに父から聞いた言葉の受け売りなのだが、では父もだれかから受け売りしてそう言ったかというと、どうも本人の率直な感想だったようで、やや常識人の範疇から外れていて良く言えばハイカラ寄りだった父にしてそう言わせしめたのだから、世間一般での410評価はよっぽどのものだったのだろう。かなり多くのブルーバードファンを、デビューしたての410はガッカリさせたに違いない。

父の2大評価を耳にしてからほどなく街を走る410の姿を見たが、ああなるほど、と納得がいった。いや、言葉から想像していた以上にお尻が下がっていたし、ひさしも「ホントだ」で、どちらも初めて見るカタチとして違和感や嫌悪感などを感じたのではなく、端的に言って「古臭い」というか「新しくない」というか、いや、デビューしたての新型車であるにもかかわらず、未来とか新鮮度といったものが希薄すぎたのである。

お尻が下がっている、は古いクルマのイメージに直結した。今で言う多走行、過走行ということで、つまり足回りがヘタったクルマのことであって昭和30~40年代の日本にはそんなクルマがいっぱい走っていたのである。いや、ちょっと年数を経たクルマの大半はヘタったリヤサスを引きずって走っていた。

別にサスがヘタっていなかったとしても、多くはスタイリング上ルノーにしても初代クラウンにしてもなだらかに下がったお尻を持っていたし、一方で千代の310は先端の尖った縦長のテールランプが大きなアイコンだったことが利いていてホントはリヤサスがヘタっていたとしても凛とした小股の切れ上がった見た目を保持していたのである。

ひさしも同じように「古い」のイメージに連結していて、乗り物で例えれば、ひさしの有無はつばめの牽引機関車EF58の運転台に対する特急こだま号の運転台であり、クルマに限ればちょっと古めの大型トラックの運転台やバスのフロントウインドウにはひさしあるいはそれに類するウインドウ上部のくぼみがあったが新しい乗用車のほとんどはそんなものはなかったのであるから。もうひとつブルーバードのひさしは、室内の狭さを直感的に連想させた。

とはいえ、街の小型タクシーに410ブルーバードは、日を追って増えていき、ボディカラーは肌色のようなベージュが多かったように思う。310タクシーとほとんど入れ替わったころ、初めて410に長時間乗る機会が訪れた。父の同僚が新車で買ったシルバーの1200デラックスで、大阪市内から三重県上野への日帰りドライブだった。

ルートは、まだ西名阪は開通していなかったので、名神で京都か滋賀あたりまで行って信楽あたりを経由したように思う。助手席に乗せてもらったか、後席だったかも覚えていないのだが、インパネまわりや内装があまりにも素っ気無いなというのが第一印象で、なかでも独立したメーターナセルとボディ同色の鉄板むき出しのダッシュボードに張り付いたスイッチやコントロールレバー、さらにはダッシュ中央の上に後付けの純正時計が、いかにも古臭かった。それらのことにオーナーはお構いなしな様子で、310ブルーバードが欧州ラリーで活躍して以来、これこそ丈夫でタフなクルマといわんばかりで、素っ気無いはスパルタンに通じたのだろうか、あのころの部分的にしか舗装されていない峠道をガンガンと走り、ボクとしては乗り心地に関してもとても新しくて洗練されたクルマには思えなかった。

その後、そのブルーバードに乗せられる機会は訪れず、街でブルーバードのタクシーに乗ることもほとんどなかったのは、家のクルマもあったし、もし、主に父の兄や両親といった親戚などと一緒にタクシーを拾うことがあっても使う距離は短いので、払う料金が僅差だからどうせなら大きい中型にしよう、ということでブルーバードの小型タクシーに乗ることは、まずなかったからである。

1年ほどしてボクの一家は東京に戻ったが、タクシーに関しては、大阪時代と同じであまり小型に乗る機会はなかった。

当時、東京都内のタクシーはクラウンやセドリックといった中型が主体となりつつあり、小型がのしていたのは多摩地区だったからで、23区と多摩地区の「県境」のようなところに自宅がありタクシーといえば都心方向に向かうのが常で、大通りに出てのぼり車線の空車タクシーを拾うと、まず中型というのが相場だったのだ。

これは、「県境」をはさんでの営業に関するタクシー業界の取り決めで、互いのエリアに空車で入り込んで客を取るのは禁止されていて、例外的に県境を越えて乗車する場合はオーケーだったのである。つまり、例えば多摩地区のタクシーが多摩地区内の客を乗せて23区内へ運ぶ、あるいはその逆は許されていて、23区内で客を降ろした場合は原則的に多摩地区まで空車のまま戻らなければならないのだ。もちろん、23区内の路上で多摩地区へ行く客を拾うのはオーケーだ。23区内のタクシーは、その反対となる。

なので、小型のブルーバードに遭遇するチャンスは滅多になく、もしブルーバードを拾ってしまうと、何となく、とてもソンをした気分になった。

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